未来志向経営者インタビューサイト「新潟社長図鑑」

新潟から広がる“つながり”のカタチ。学生・障がい者・企業の新しい出会い【代表 肥田野正明氏】

株式会社バウハウス

清掃業から始まった挑戦、“まちと人”をつなぐ原点

地域と若者を、もっと近くに。

私は、1992年に建物清掃の会社として創業しました。
当時は、日々の清掃業務をこなしながら、社員とともに「清潔な空間づくり」を徹底していくことに注力していました。

それから30年以上が経ち、現在では、ビルメンテナンス業だけでなく、
ソーシャルビジネス、障がい者と企業をつなぐ事業、新潟市との連携による地域づくりなど、少しずつ活動の幅が広がってきました。
今、私が特に力を入れている取り組みのひとつが、「まちづくり」と「産学交流」です。

きっかけは、ある時新潟市の経済部の方と話していたときのこと。
「学生たちは、なかなか大学周辺から出たがらないんですよ」と教えてもらったんです。
たしかに、大学1〜2年生の頃って、アルバイトに明け暮れる日々。
せっかく新潟市中心部に“資源の宝庫”があるのに、それに触れることもなく、
就活時期になってようやく街に目を向ける──それって、すごくもったいないことだなと感じました。
それならいっそのこと、学生が街に出てきたくなるような仕掛けをつくろうと始めたのが、「まちづくり×学生」の活動です。

地域のゴミ拾いをしながら、落書きや破損箇所を点検して、国交省や新潟市の担当部署に報告を行う。
これだけ聞くと「地味な活動」に思われるかもしれませんが、街に“主体的に関わる”経験って、学生にとってはすごく貴重なんです。
なにより、教室では生まれない対話や気づきが、開かれたフィールドでは自然に生まれる。これが大きい。

まちに触れ、課題に気づき、自分の役割を考える──
そういう“人生のヒント”みたいなものが、実はゴミ拾いや地域点検という日常の中に潜んでいるんじゃないかと、私は思っています。

“まちづくり”は、学生の心をひらく鍵になる

ただの活動じゃない。心が動くまちづくりの時間

1回の活動には、約30名の学生と社会人の方たちが参加します。
ただゴミを拾うだけでは「やった感」が薄く、誰かに褒められるわけでもない。だからこそ、
活動には「対称(ターゲット)」を設け、「まちをどう変えられたか」という視点を与えるようにしています。
活動後には、学生同士や企業の社会人と一緒にブランチミーティングを開催。
「まちづくりを体験してみてどうだった?」「新潟のまちは、どうなってほしい?」
そんな対話の時間をつくることで、学生の中に“自分ごと”としてのまちづくりが芽生え始めます。
なぜブランチなのか?
長時間の拘束を嫌う学生にも無理なく参加してもらえるよう、午前中の短時間での活動としています。
ブランチを提供してくれる飲食店も、少しでも貢献しながら、新潟の食文化に触れることができる_そんな多面的な関わり方こそが、この活動の仕掛けのひとつです。

もうひとつの仕掛けは「学生×社会人のペアワーク」。
活動の最後にはグループセッションと発表の時間を設け、自然なかたちで学生が心を開き、
自分の考えや想いを話す場が生まれていきます。
ある学生が、「いいことばかりじゃなくて、悪いこともちゃんと教えてください」と発言したことがありました。
すると参加していた方が、「よし、じゃあ話すよ」と率直に語ってくれたんです。
その時、学生たちは“そんなふうに言える会社っていいな”と感じてくれていた。内容以上に、空気感が心に残った瞬間でした。

印象的なエピソードもあります。
真面目でおとなしい印象だった学生が、恋バナを話しはじめたんです(笑)。
場の空気がやわらぎ、個人の想いが自然に語られる――そんな“関係性の場”をつくれた実感がありました。
その彼は「起きた瞬間から、新潟っていいところだなって思う」と話してくれた。地元出身ではなかった彼のその言葉が、とても印象的でした。

私がこの活動で目指しているのは、「学生と企業をつなぐこと」だけではありません。
ショッピングや飲食をする場所という発想ではなく、「自己実現ができる場」として、街の価値を見つめ直してもらうこと。
そして、新潟が“第二の故郷”になれば嬉しい。

好きなまちで、何かに関わる。その積み重ねが、再訪や移住、そして“地域を育てる意欲”につながると信じています。
この取り組みは、毎年4月から11月まで続けています。

企業と学生が対等に出会う場をつくるということ

企業と学生が混ざり合う、新しいつながり方

この活動には、実は多くの企業も参加してくれています。誰もが知るような大手企業もこの取り組みに賛同してくれていて、社会全体で支える流れが少しずつできてきたと感じます。

新潟にある大手企業の方から、「うちの会社のこと、もっと学生に知ってもらいたくて」と言われたので、
「えっ、知らない学生はいないですよ(笑)」なんて笑い話から始まりました。
でも実は、「(その大手企業の工場が)新潟にあることを知らない学生は多い」という話だったんですね。そこから、
「やっぱり、こういうコミュニティは本当に大事なんだ」と共感してくださって、今では継続的に参加してくれています。
参加企業は、もちろん出資というカタチで協力してもらっています。ただ、最初は「人材がほしい」
という想いから積極的に学生と話そうとする企業も多かったんですが、今ではその空気も変わってきました。
ガツガツとしたアプローチではなく、学生たちと自然なかたちで対話できる、そんな“あたたかい場”ができつつあるのを感じています。

最近では、少しずつですが、「一緒に何かできないか」と企業の方からお話をいただく機会も出てきました。
でも、企業と学生をただ直接つなぐのではなく、私がその間に入るようにしています。
なぜかというと、学生の素直な想いや不安、社会へのまなざしを、しっかり受け止めて伝えたいからです。

この活動は、単なる人材育成や採用活動ではなく、「人」と「まち」をどうつなぐかという本質を追いかけているものなんです。

「社会貢献って、仕事と両立できるの?」──戸惑いから始まった挑戦

障がい者と企業のマッチング

今でこそいろんな社会的な活動に関わっていますが、実は最初から「こういうことがやりたい!」
と思っていたわけじゃないんですよね。

きっかけは、2005年に新潟青年会議所に入会したこと。当時の理事長から「社会課題を解決するビジネスを考えよう!」
と提案されたとき、僕は正直こう思ったんですよ。「ビジネスと社会貢献って相反するものでしょ」って。
利益を追いかけるビジネスと、誰かのために動く社会貢献が、同じ土俵で成り立つなんて想像もつかなかった。
でも、その一言で“学んでみよう”と思ったのが、すべての原点だったんです。
最初に訪れたのは、ある障がい者施設。そこで、障がいのある方々が、商品を作って一生懸命販売していたんですが、
なかなか利益に繋がっていない現実がありました。でも、みんな真剣にモノづくりをしていた。
だから、なんとかしてあげたいと本気で思ったんです。
「人は“愛”があると、ものを買ってくれるんじゃないか?」──そんな風に考えたときに、
思い出したのが“アイ・ラブ・ニューヨーク”のTシャツ。あんな風に、共感や想いを乗せた商品ならきっと広がるって。
でもすぐに、「じゃあ、どうやってそんな商品作るの?」って(笑)。アイデアと現実のギャップに直面しましたね。

そんなとき、友人が言ってくれたんです。「お前の会社の清掃事業にこそ、マッチするんじゃないか?」って。
そうか、掃除だったら障がいのある人たちでもできる仕事があるかもしれない。
そう思ってスタートしてみたら、どんどん需要が広がっていったんです。
さらに背中を押してくれたのが、ソフトバンクさんが当時取り組んでいた“ショートタイムワーク”という考え方でした。
障がい者の方が、短時間でも働ける就労の仕組みを作れるかもしれない。そう感じて、すぐにソフトバンクさんに連絡して、お話をさせてもらいました。
ただ、そこには注意点もありました。「障がい者=短時間勤務」というイメージが一人歩きすると、逆に社会的な差別につながってしまうかもしれない。
だからこそ、誤解を生まないような配慮やバランスには常に気を配ってきました。
でも今振り返ってみると、そうやって一つひとつ丁寧に進めてきたからこそ、ここまでカタチになってきたんだと思います。
あのとき、周りの仲間やソフトバンクさんと一緒に試行錯誤できたのが、大きな財産ですね。

想いがつながる未来へ

社会と企業と人の「真ん中」に立ち続けるために

障がい者の就労支援として取り組んでいく中で、どうしても「短時間の就労も難しい」という方たちがいます。
でも、彼らは何もできないわけじゃないんです。むしろ、驚くような才能を持っている人もたくさんいる。

ある日、ある施設で絵を描いている方がいたんです。毎日、ただ黙々と、絵を描いている。
その色彩の美しさ、世界観の独自性には、思わず見入ってしまいました。
「これは、何かカタチにできるかもしれない」と、ふと思ったんです。

実は私、以前RICOHで働いていた経験があって。
コピー機やFAXって、“売る”んじゃなくて“リース”や“レンタル”で展開しているんですよね。
そのビジネスモデルをヒントに、「障がい者アートを“レンタル”する」というアイデアが生まれました。

そして立ち上げたのが、「まちごと美術館」というプロジェクト。
障がいを持つ方が描いたアートを、企業やお店に一定期間貸し出して展示するという仕組みです。

すると、モスバーガーさんが新潟の店舗でこの取り組みに参加してくれたんです。
それは本当に大きな出来事でした。

「今まで来なかった層のお客様が来るようになった」とモスバーガーさん側からも反響があり、なんと社内では“モスごと美術館”と呼んで応援してくれているそうです。

アートって、壁に飾られているだけでも、人の気持ちを明るくしたり、会話のきっかけになったりします。
作品を通じて「この色、いいね」「すごく個性的だね」って。
その会話の裏側には、“その作品を生み出した誰か”がちゃんと存在している。

私たちが地域の中で活動してきたからこそ、こういった発想にもたどり着けたんだと思います。
この取り組みを通して、アートが人と人、企業と社会を結ぶきっかけになってくれたら嬉しいですね。

まちづくりも、学生との交流も、アートの活用も、すべての根っこは「誰かと誰かをつなげたい」という想い。
それは清掃業として、ずっと人の暮らしに寄り添ってきた私だからこそ、大切にしたい部分でもあります。

これからも、社会に「こういうカタチもあるんだ」と気づいてもらえるような小さな挑戦を、積み重ねていきたいですね。

会社情報

会社名略称. 株式会社バウハウス
勤務先名 株式会社バウハウス
本社住所 新潟県中央区堀之内南1‐32‐16 3F
代表者名 代表取締役 肥田野 正明様
新規事業・チャレンジしたいこと \継続していく/
今後も、障がい者と企業の“マッチング”を軸にした取り組みを続けていきたいと考えています。
現在は、私自身が直接雇用する形ではなく、福祉事業所に仕事を委託し、請負業務として進めています。現場には、障がいのある方とその支援者の方がペアで入る仕組み。現場に慣れてきた段階で、「次は雇用を考えてみようか」と、新しいステップにつなげていけるのが理想です。
こうしたマッチングの延長線上で、企業の社長さんたちと「人手不足」の話になることもあります。そこから自然とつながりが生まれ、今では特別支援学校の生徒さんたちが職場体験できるような仕組みも動き始めました。
企業が潤うだけでは、社会全体の幸せにはつながらない。
企業も、地域も、そして“人”も潤う仕組みでなければ、持続可能なまちづくりは難しいと感じています。
だからこそこれからも、地域貢献・学生との交流・障がいのある方たちとの関わり――その一つひとつを丁寧に結びながら、社会の可能性を広げていきたい。
“やり続けること”こそが、次の変化を生み出すと信じているからです。
こんな人に会いたい \こんな人と出会ってみたい/
前向きな人、ポジティブに物事を捉えられる人と出会いたいですね。
やる前から「無理だ」とあきらめてしまったり、「どうせこうなる」と決めつけてしまう――そういった思考も、大人との関わり次第で、いくらでも変えられると思っています。
だからこそ、「経験を教える」のではなく、「経験させる」ことが大事。年齢なんて関係ない。学生も含め、どんな立場の人でも――挑戦しようとする人、ポジティブな視点で物事を見られる人と、一緒に未来をつくっていきたいと思っています。
事業内容 ビルメンテナス事業・障がい者アートレンタル事業・障がい者就労マッチング事業・公共空間利活用事業・スノーポール製造販売事業
メッセージ \やりたいことは、“今”やる/
学生たちの前で、私はよくこんな話をします。
「私、定年まであと4年しかないんだよ。もし、自分の人生に時間制限があったら、どうする? 4年しかないってわかったら、前向きでいるのも難しくなるよね(笑)でも、だからこそ、今の時間を大事にしなきゃって思うよね?」
この話の背景には、私の大切な“相方”の存在があります。彼は、私と一緒にソーシャルビジネスを始めた仲間で、なんとガンの手術を5回も経験しているんです。でも、どんなときも前向きなんですよ。「今のうちにやれることは全部やりたい」って、本気でそう言って行動しています。
そんな彼もまた、大切なご家族を亡くされた経験があります。あるとき、学生の前でその話をしてくれたんです。とても辛い話でした。でも、彼の言葉には不思議とネガティブさがない。むしろ「だから今を全力で生きるんだ」という強いエネルギーに満ちていました。

“やりたいことは今、やる。”

それがどれほど大切かを、私は彼の姿から学んでいます。人はいつ、何があるかわからない。だからこそ、「いつかやろう」ではなく、「今やろう」と思えるかどうかが、人生を前に進める鍵だと思うんです。
学生にも、社会人にも、大人にも――今この瞬間を大切にしてほしいと、心から願っています。
その他 株式会社バウハウス(ホームページ)
https://www.bauhaus-niigata.co.jp/

取材者情報

今回の社長へのインタビュアーのご紹介です。
「話を聞きたい!」からお問い合わせを頂いた場合は運営会社の株式会社採用戦略研究所を通して、各インタビュアー者よりご連絡させて頂きます。

取材者名 ㈱採用戦略研究所 土田
住所 新潟県長岡市山田3丁目2-7
電話番号 070‐6433‐5645
事務所HP https://rs-lab.jp

話を聞きたい!