未来志向経営者インタビューサイト「新潟社長図鑑」

ただ直すだけじゃない!!正しいと思ったことを貫く、関自動車の流儀。【代表 水島絵理氏】

有限会社関自動車

祖父から母へ、そして私へ

想定外から始まった継承の物語

有限会社関自動車は、母方の祖父が立ち上げた会社です。
ところが、母は一人娘として別の家へ嫁ぎ、祖父が急逝した時には、跡を継ぐ人は誰もいませんでした。残されたスタッフの方々の姿を前に、「会社をどうするのか」と家族は立ち尽くすしかなかったのです。

そのとき、専業主婦だった母が「せめて名前だけでも」と覚悟を決め、代表に就きました。経営者としての経験など一切ない中で、それでも「会社を残したい」という想いに背中を押されたのだと思います。

当時の私は高校生。母から「継いでほしい」と言われたことは一度もありません。その後大学へと進学し、そむしろ自分の未来を探していて、就職活動の結果ご縁をいただいたのはトヨタ自動車でした。営業という現場で、うまくいかないこともたくさんありましたが、その分だけ大きく成長させてもらえた時間だったと思います。

やがて退職を考えていた時、母から「一度こっちに入ってみる?」と声をかけられました。軽い提案のようでいて、その裏に込められた想いを感じた私は、「ここに入るということは、いずれ継ぐことを見据えること」と自然に理解していました。

入社後は、他のスタッフと同じ立場で働きました。掃除も接客も雑務も、すべて経験することで会社を“自分の目”で見たかったのです。そして27歳で社長に就任。振り返れば今年で10年が経ちました。

初めの頃は、母とともに“心機一転”のため、長年勤めてくださった年配スタッフには勇退していただく決断をしました。寂しさもありましたが、未来をつなぐための一歩でした。新しいスタッフを迎え入れ、今は私を含め4人の小さなチームで会社を守っています。面接で出会った工場長と事務スタッフは、今でも大切な仲間として共に走り続けています。

そしてスタッフと共に築いてきたこの10年。その歩みの中で「私たちらしさ」と呼べるものが、少しずつ芽生えてきました。

関自動車の強み

“おせっかい”がつくる信頼関係

私たち関自動車は、自動車整備工場です。メインは整備や車検、修理といった“工場を動かす仕事”。その延長線上に販売があります。つまり、私たちは最初から車を並べて「さあ買ってください」というスタイルではありません。修理や車検でご来店されたお客様が、「そろそろ入れ替えを…」と考えるタイミングに寄り添いながら、そのとき初めて販売の話になるんです。

私自身、トヨタディーラーにいた経験があるので、大手の強みや雰囲気はよく理解しています。そのうえで、関自動車の強みを一言でいうなら“おせっかい”です(笑)。もちろんいい意味で。

ただ修理や車検をして終わりではなく、お客様の今後や生活の背景まで考えて、「こうしてほしい」と言われたことに対しても「それより、こちらのほうが安心ですよ」と提案できる。ときにはお客様と意見をぶつけ合うこともありますが、それも信頼があるからこそ。気軽に言い合える“親戚みたいな関係”を築けるのが、私たちの最大の強みだと思っています。

実際にこんなことがありました。長く通ってくださっていた年配のお客様が、「家の前でちょっと擦っちゃってね」と車を持ち込まれたんです。ご本人は軽い傷だと思われていたのですが、実際には前の家に突っ込むような危ないぶつかり方をしていて、「本当に直していいのか」と強い不安を感じました。心配になってご家族を探し出し、勝手ながら娘さんに連絡をして「本当に車を直すべきか」を相談したのです。すると娘さんは「そんなふうに言ってくれる車屋さんいない」と驚かれ、最終的にご家族で話し合って納得していただけました。お客様から「ありがとう」と言われたときには、心からやってよかったと思いました。

会社としては修理をしてお金をいただく方がシンプルかもしれません。でもそれ以上に、事故を未然に防げたことや“お客様の未来にとって正しいと思える判断”ができたことの方が、ずっと大きな価値だと思っています。余計なおせっかいかもしれない。時には怒られることもあるかもしれない。それでも「自分が正しいと思うことをやりたい」という想いがあるからこそ、お客様と本音で向き合えるのです。

そして何よりも、こうしたやり取りを通じて築かれる“信頼関係”こそが、私たちの毎日の仕事そのものになっています。

27歳で社長に就任

最大の苦労と転機

27歳で社長になって、一番苦労したのは“人”でした。
ずっと支えてくれるスタッフはいるものの、ある時期はなかなか人が定着しなかったんです。入ってもすぐ辞めてしまったり、意見が合わなくて離れてしまったり。うまくいくまでが本当に苦しかったですね。

当時の私はまだ若くて、言わなきゃ気が済まない性格でしたから(笑)、スタッフとバチバチすることもありました。けれど今はもう大人ですから、その場でぶつけることだけが正しいのではなく、時間をおいて冷静なときに話すことも大事なんだとわかるようになりました。言わなきゃいけない時と、少し置いた方がいい時。その境目を見極めるのは、今でも難しいですね。

ここ数年は、スタッフの入れ替わりもなく、みんなで協力し合える安定したチームになってきました。本当は経営のことを考えれば、もう1人スタッフを増やしたほうがいいのかもしれません。でも人件費のことなどを考えると、もう少し先の話になりそうです。

そんな中で大きな転機になったのは、やはり出産でした。
それまではスタッフに任せることが苦手で、私が全部抱え込んでしまう。きっとスタッフも「任されていない」と感じて、苦しかったと思います。でも出産を機に、強制的に現場を離れなければならない状況になり、「あとはみんなにお願いね」と任せるしかありませんでした。すると、みんなも「自分たちでやらなきゃ」と意識が変わってくれて、私自身も初めて一線を引くことができました。

それは会社にとってもプラスになりましたし、私自身にとっても大きな変化でした。出産と育児が私を変えてくれて、会社の環境もよくしてくれた。今では心配でスタッフより先に帰るなんてできなかった私が、気持ちの荷を下ろし、家族と過ごす時間も大切にできるようになったんです。

スタッフへの思い──

“家族ぐるみ”で築く温かな関係

関自動車では、スタッフと共にお客様のことをできる限り共有するようにしています。誰が対応しても状況がわかる体制を整えておけば、私が不在でも安心して任せられるし、お客様にとっても「誰に話しても大丈夫」という安心感につながるからです。

以前は会社のイベントとして、ボウリング大会やバーベキューを開催し、スタッフの家族も一緒に参加して楽しんでいました。最近はイベントを開く機会は減りましたが、スタッフの娘さんが彼氏を連れて遊びに来たり、息子さんが小さい頃は「ただいまー」と小学校帰りに会社へ立ち寄ったり。そんなふうに、家族も自然と関わってくれるような環境ができています。今でも変わらず遊びに来てくれるのは、本当に嬉しいことですね。

私は、スタッフの家族のことも知っておきたいと思っています。なぜなら、大事な決断をする時には、その人の家族のことも一緒に考えて判断したいから。スタッフだけでなく、その家族にとっても良い選択でありたい。そういう気持ちを持ちながら、日々一緒に働いています。

そして、そんな信頼できる仲間やその家族と一緒だからこそ、これからの関自動車の未来を描いていけるのだと思います。

地域で一番“働きたい場所”へ

車を通じて人生に寄り添う喜び

会社としての将来ビジョンは、大きな夢や派手な目標ではありません。唯一の願いは、「新発田で一番働きたい」と思ってもらえる会社になることです。働く人が「ここで働きたい」と心から感じられるなら、それは自然と“いい会社”である証になると私は思っています。

正直に言えば、自動車整備士を目指す人は年々少なくなっています。資格も必要で、決して楽な仕事ではないし、給料の面でも決して高い水準とは言えません。でも私は、この仕事を誇りに思っています。

なぜなら、車を通じてお客様の人生に深く関われるからです。保険を扱う上で家族構成を伺い、働き方や生活スタイルを知り、修理や購入の場面で一緒に悩んで決めていく。その過程で、お客様の人生に寄り添いながら歩ませてもらっている感覚になるんです。車を買うのは私ではないのに、不思議と一緒に選んでいる気持ちになれるんですよね(笑)。

事故の修理に持ち込まれたときには「大変でしたね」と声をかけ、いつの間にかお子さんまでお客様になってくださる。気づけば何世代にもわたって人生を共有させてもらっているような関係になれるのです。

整備士のスタッフにとっても、仕事は決して楽ではありません。それでも「お客様と会話ができる」「ぶつけちゃったよ~なんて話を笑い合える」――そんなやりとりがあるからこそ、やりがいや楽しさにつながるのだと思います。

車を通じて、楽しさも、やりがいも、人の人生に関わらせてもらえる。この仕事は本当に面白くて、誇れる仕事です。
そして私は、そんな仕事を大好きな仲間と一緒に続けながら、“働きたい会社”を未来へと育てていきたいと思っています。



高齢者の方の運転や車での事故防止について、市と連携して取り組めないかと考えています。たとえば高齢福祉課などと協力すれば、一人暮らしの方へのケアの一環として「車の利用状況」を把握しやすくなるのではないでしょうか。

「どこの車屋さんに出しているの?」と市役所の方から声をかけてもらえれば、車屋と行政がつながり、高齢者を見守る仕組みにも発展できると思います。見守り隊のような形で、近くにお子さんが住んでいない高齢の方々の安心を支えることができれば嬉しいですね。

実際に、お客様の中には認知症の方もいらっしゃいました。その際には市へご報告をして、連携を取りながら安全第一で対応させていただいたこともあります。小さな自動車工場だからこそ気づけることを、市と協力しながら広げていけたらと考えています。

会社情報

会社名略称. 有限会社関自動車
勤務先名 有限会社関自動車
本社住所 新潟県新発田市中田町3丁目1292‐1
代表者名 代表取締役 水島 絵理様
新規事業・チャレンジしたいこと 高齢者の方の運転や車での事故防止について、市と連携して取り組めないかと考えています。たとえば高齢福祉課などと協力すれば、一人暮らしの方へのケアの一環として「車の利用状況」を把握しやすくなるのではないでしょうか。

「どこの車屋さんに出しているの?」と市役所の方から声をかけてもらえれば、車屋と行政がつながり、高齢者を見守る仕組みにも発展できると思います。見守り隊のような形で、近くにお子さんが住んでいない高齢の方々の安心を支えることができれば嬉しいですね。

実際に、お客様の中には認知症の方もいらっしゃいました。その際には市へご報告をして、連携を取りながら安全第一で対応させていただいたこともあります。小さな自動車工場だからこそ気づけることを、市と協力しながら広げていけたらと考えています。
事業内容 自動車整備/車検/修理

取材者情報

今回の社長へのインタビュアーのご紹介です。
「話を聞きたい!」からお問い合わせを頂いた場合は運営会社の株式会社採用戦略研究所を通して、各インタビュアー者よりご連絡させて頂きます。

取材者名 ㈱採用戦略研究所 土田
住所 新潟県長岡市山田3丁目2-7
電話番号 070‐6433‐5645
事務所HP https://rs-lab.jp

話を聞きたい!