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越境がひらいたキャリアの扉。震災を経て気づいた“生き方の探究”。 人と組織の未来に問いを投げ続ける Inquiry の物語【代表 山本一輝氏】

Inquiry合同会社

「Inquiry」という名前に込めたもの

すべての仕事は、“問い”から始まる

「Inquiry(インクワイヤリー)」って、海外では「お問い合わせ」という丁寧な表現としても使われるんですが、私にとっては、もう少し深い意味があります。

ひとつは「問い」。
もうひとつは「探究」。

私たちがやっている仕事って、ワークショップをつくったり、ファシリテーションで対話の場を支えたり、キャリアコンサルティングやコーチングをしたりと、かたちはいろいろあります。でも、全部に共通しているのが「問い」なんです。

場に対して問いを発する。
人に問いを投げかける。
チームや組織に問いを投げかける。

そこから対話が始まり、思考が深まり、自分の内面と向き合い始める。
私たちの仕事は、いつも「問い」からスタートします。

もうひとつの「探究」という意味も、私の生き方そのものに近い言葉です。
真理を探究する、答えを探究する、物事を深く極めていく――。
私はずっと、そうやって生きてきましたし、これからもそうありたいと思っています。

だからこそ、「人や社会、組織に問いを投げること」と
「探究し続ける生き方」という、ふたつの意味を込めて、会社名を Inquiry と名づけました。

気づけば、創業して10年。
法人化してからは4期目になります。

今は、中小企業の人と組織づくりの伴走、行政や官公庁とのプロジェクト、
大学・専門学校・高校など教育機関との協働、そして地域全体の人材・キャリアの仕組みづくりなど、関わるフィールドはどんどん広がってきました。

でも、どこに行っても、何をしていても、
私たちの真ん中にあるのは、変わらず 「問い」と「探究」 なんです。

震災が止めた“歯車”

「生かされた側として、どう生きるか」

ファーストキャリアは、飲食業界でした。

大学時代は教育に関心があって、教員免許を取ったり、心理学科で教育心理学を学んだりしていました。
間接的にでも「教育」に関わる仕事がしたいな、とぼんやり思いながら就活をしていたんですが、
当時はちょうどリーマンショックの時期。内定取り消しも多くて、本当に厳しいタイミングだったんです。

そんな中で、学生時代からアルバイトしていたのが飲食店なのもあり飲食業界にご縁があって、そのまま飲食業界へ入りました。
けれど、当時はいわゆる“ブラック”な環境で、月に5日休めればいいほう。
朝から晩まで、目の前のルーティンワークに追われる毎日でした。

そして、子どもの頃にいじめや不登校を経験したこと。
そこで支えてくれた大人たちへの感謝。
「心理を学びたい」「人の成長に関わりたい」と思って選んだ進路――。

そういった原点となる思いが、忙しさの中で少しずつ薄れてしまっていた時期でもあります。

そんな私の“歯車”を、ある日、強制的に止めた出来事がありました。
東日本大震災です。

当時、私は仙台駅構内の店舗で働いていました。
大きな揺れ、停電、インフラのストップ。
スタッフやアルバイトの子と一緒に、1時間歩いて家に向かい、車のエンジンをかけてついたテレビに映っていたのは――
火災がおき、火の海となった気仙沼映像と、津波で多くのご遺体が打ち上げられたというラジオからのニュースでした。

「世界の終わりみたいだ」と、本気で思いました。
明日どうなるかもわからない。
そんな中でも、店舗の復旧や自分たちの生活再建をしなければならない日々が続きました。

スタッフのご家族が亡くなられた話。
別店舗のスタッフが津波に流されてしまった話。
ご葬儀がいくつも続き、「昨日まで元気だった人」が突然いなくなる現実。

そこで私は、真正面から突きつけられたんです。

「人って、本当にいつ死ぬかわからない」
「生かされた側として、私はどう生きるべきなんだろう」

生きたくても生きられなかった人たちがいる。
その中で自分だけが何となく生きていていいのか。
「ちゃんと自分の人生に真摯に向き合わないと失礼だ」と、心の底から思いました。

そこで一度、立ち止まって自分に問い直しました。

――私が本当にやりたいことって、何だったっけ?

忙しさの中で忘れかけていた原点に、もう一度光が当たりました。
やっぱり私は、人の成長に関わる仕事がしたい。
子どもに限らず、大人も含めて「学び」と「成長」に関われる場所に身を置きたい。

そう考え、店舗の復旧を見届けたあと、
私は自分のキャリアを一度リセットすることを決めました。
そしてご縁があり、2012年にリクルートへ転職します。

越境が教えてくれた、「会社の看板の外の自分」

24歳で出会った、震災復興の現場とNPOの人たち

リクルートに入社したのは、震災復興のさなか。
企業も学校も混乱していて、「サービスを売ればいい」という状況ではありませんでした。

若者はどんどん地域から流出していく。
風評被害や原発の影響も根強い。

「普通に営業しているだけじゃだめだよね」という空気のなかで、
所属していた東北支社では、新しいサービスの開発や復興プロジェクトが立ち上がり、
地域の企業や教育機関を元気にするために、いろいろな立場の人たちと連携しながら動く日々でした。

そのとき出会ったのが、石巻や気仙沼などに入っていたNPO、ボランティア、地域おこし協力隊の方たちです。

自分のキャリアを横に置いて、震災復興のために現場に入り、街のために活動している人たち。
それまで会ったことのない属性の方々で、衝撃を受けました。

その方たちと一緒に、高校生向けのキャリア教育のプログラム企画や、学校外でプロジェクトに取り組む生徒に出会ったり、企業向け研修を共につくったり。
25、26歳の私は、仕事をしながらこうした地域の人材育成の現場にどっぷり関わっていきました。

次第に気づいたことがあります。

会社の中にいる私は「リクルートの一員」。
お客様からすれば「リクルートの人」です。
提案のベースはリクルートの商材であり、会社のブランドや影響力が前提にある。
会社の中だけだと、それに気づかない。

一方で、地域に出てしまえば、私がどこの会社の人かなんて、あまり関係がない。
問われるのは、「あなたは何ができる人なの?」
「あなたはどんな場をつくれるの?」
「あなた個人として、何を大事にしているの?」ということでした。

会社の看板の外で、“自分自身” が問われる感覚。

大企業かどうかなんて、誰も気にしていない世界観。
そこで私は、良い意味での「越境」を経験しました。

同時に、地方の人口流出や、若者が戻ってこない現実、社会課題としての「人材」の問題も、
震災直後からずっと見てきました。
「このまま、会社の中だけの仕事を続けていていいのか?」
「自分の人生を、この先どう使いたいのか?」という違和感も、少しずつ大きくなっていきます。

そうした経験が重なり、29歳のときに
リクルートでのキャリアに一つ区切りをつけ、独立することを決めました。

独立後は、フリーランスとしてできることを一つずつ形にしていく日々でした。

新潟は10年離れていたので、Uターンする1年ほど前からまずは人脈を広げ、自分の知らない世界を知るところからはじめました。
教育現場では、学校の先生だけでは難しい「地域とつながる学び」が、ようやく動き出そうとしているタイミングでした。

高校を中心に、
・社会人と学生がつながるプロジェクトの立ち上げ
・教育NPOとの協働
・企業や自治体対象にした社内研修の実施
・まちづくりの現場で、行政と一緒にワークショップの場をファシリテートする
・個人向けのキャリアコンサルティング

そんな活動を少しずつ増やしていきました。

東北でも、「独立するならうちの仕事を手伝ってよ」と声をかけてもらい、
NPOのプロジェクトに業務委託で関わったり、高校生向けのキャリアプログラムや企業研修を
一緒につくったり。

何か「これだけをやる」と決めていたというよりは、
自分が興味を持てて、かつ力になれそうなことを一つひとつ受け止めていった結果、
それらを整理・集約したものが、今の Inquiry の事業領域になっていった――という感覚に近いかもしれません。

3つの事業領域で、組織と地域を変えていく

HRパートナー/ラーニングデザイン/インパクトデザイン

今、Inquiry には大きく3つの事業領域があります。

① HRパートナー領域

中小企業の「人と組織」の伴走パートナー

中小企業には、専門の人事担当がいない会社がほとんどです。
採用サービスを入れても、活かしきれない。
人事制度も整っていない。
仕事はあるし営業もいるけれど、「人と組織の問題」が原因で成長が止まってしまう会社も少なくありません。

黒字なのに、継ぐ人がいないから倒産してしまう――。
私はそれを「組織づくりに失敗した結果」の一つと捉えています。

そうならないように、私たちは“コンサルタント”というより 「未来を描くパートナー」として、企業の中に入らせてもらいます。
経営者や幹部だけでなく、現場とも対話しながら、
現場の声を上に届け、経営者の想いを下に届ける「翻訳者」としての役割も担います。

人事制度の設計・見直し、採用戦略の立案と実行支援、リーダーシップ開発。
何より大事にしているのは、組織を分解し、関係性を紐解きながら、
ミッション・ビジョン・バリューや共通言語、組織文化をつくっていくことです。

② ラーニングデザイン領域

「研修」ではなく、「学びを起点に変化を生み出す」

私たちは、学びを単なる知識の獲得ではなく「人の変化」だと考えています。
だから、単発の研修や講演をして終わり、にはしません。

・ワークショップや実践型インターンのデザイン
・プログラムの監修
・講演や研修のその先のアクション設計

「この学びが、次にどんな変化につながるのか?」まで含めて設計し、
教える仕組みではなく、“変わっていくための仕組み” を一緒につくっていきます。

③ インパクトデザイン領域

1社ではなく、地域全体の“勝ち方”をつくる

正直、1社だけが人事制度を整えて、採用を頑張っても限界があります。
特に人口減少のような社会問題は、地域全体が変わらなければ、若者が定着する土壌は育たないからです。

1日のうち、仕事は8時間。
残りの16時間を過ごす「地域」や「暮らし」の部分に愛着がなければ、
どんなに会社が良くても、その人はその土地に居続けようとはおもいませんよね。
だから私たちは、会社単位だけでなく、
行政や教育機関、企業同士が協働しながら、みんなで勝ちにいくための企画や仕組みづくり――それを「インパクトデザイン」と呼んでいます。

新潟県では、三条市や南魚沼市での「地域の人事部」の立ち上げ支援をはじめ、
県外では愛媛県宇和島市や香川県三豊市など、県外でも同様の取り組みの伴走をしています。

ある会社では、ワンマンで頑張っていた社長が、
外部プロジェクトへの参加を通じて、若手社員の意外な一面に気づきました。

「うちの若手って、こんなふうに自分から意見を言えるんだ」
そう実感したことで、
「自分が引っ張らなきゃ」というマインドから、「任せて、信頼する」マネジメントへと変化していきました。

また別の会社では、人事理念やカルチャーを一緒につくったことで、
「誰を採るか」の判断基準が明確になり、
代表の主観ではなく、メンバー自身が「うちにフィットする人」を選べるようになりました。

その結果、代表は自分のやるべきことに集中できるようになり、
現場には自律的な文化が生まれつつあります。

私は、こうした地域のロールモデル――
社長だけでなく、20代・30代の若手にもスポットライトが当たる事例を、もっと増やしていきたいと思っています。

多様な関り方ができる「退職なき組織」をめざして

2030年の働き方と組織を、自分たちで実験する

Inquiry で一緒に働いてくれているのは、複業社員3名と、インターン・アシスタントが数名。
近々、時短正社員も採用しようと考えています。

私は最近、こんな問いを自分たちの組織にも投げています。

「そもそも、なぜ1日8時間・週40時間働くことが前提なんだろう?」
「なぜ、“辞める” という選択肢しかない働き方なんだろう?」

8時間、ずっとフルで集中し続けて働ける人って、そう多くないと思っています。
力を抜く時間も含めて設計しないと、人間はもたない。
むしろ、短い時間でも同様の成果を出せる人だっているはず。
そう考えると、そもそも今の勤務時間の常識は適切なのだろうかと疑問を持つようになりました。

人口減少社会に向かうこれからの日本で、
働き方の前提を抜本的に変えていかないと、生き残れないだろうという危機感もあります。

私たちの仕事は、時間数と売上が比例するようなものでもありません。
「そこに何時間いたか」より、「どんな価値を生み出したか」が重要です。

だから、フルリモート・フレックスで、
月100〜120時間を自己裁量で働いてもらうようなかたちを構想しています。
コミットするべきことに責任を持ちながら、対面もうまく組み合わせる。
知識労働者なら、そういう働き方ができるはずだと思うからです。

もうひとつ、私が本気でなくしたいと思っているのが、
「退職」という概念 です。

会社が求めることに応えられなくなったとき、
あるいは、自分が期待していたものと待遇や条件が合わなくなったとき。
多くの場合、それが「辞める理由」になっています。

でも、それって本当にもったいない。

フルタイムで働けないから辞める。
もっとやりたいことがあるから辞める。
収入面でチャレンジしたいから辞める――。

そのすべてが「離れる」しか選べない世界ではなく、
個人の事情やライフステージに合わせて、時間や関わり方を柔軟に変えられる会社であれば、
「辞めなくていい」という選択肢も増えていきます。

制度に人が合わせるのではなく、人に制度を合わせるという考え方ですね。

実際、今いるメンバーも、3分の2は別の仕事、3分の1がInquiry。
どちらの仕事も、お互いにとってプラスになるような“複線的なキャリア”を一緒につくっています。

私は彼らの上司であると同時に、彼らの成長に伴走する存在でもありたい。
そして、「ここで働き続けたい」と思ってもらえる環境を、一緒に育てていきたいと思っています。

2030年に向けて、ピラミッド型の組織も、1日8時間の労働も、過去の延長から続けてきた当たり前を理由に続けるのではなく、「そもそも、なぜ?」と問い直したい。

Inquiry は、そんな問いを自分たちの組織にまず投げてみて、
試行錯誤や失敗も含めて実験し、その知見をクライアントや地域に還元していく会社でありたいと思っています。

正解がない時代だからこそ、
誰かが「新しいやり方」を試してみないと、次の一歩は見えてきません。

これからも私は、人や組織、社会に問いを投げ続けながら、
「学び」と「成長」と「働き方」の新しいかたちを、探究し続けていきたいと思っています。

会社情報

会社名略称. Inquiry合同会社
勤務先名 Inquiry合同会社
本社住所 新潟県新潟市西区坂井878‐105
代表者名 代表 山本 一輝様
こんな人に会いたい 私たちは、仕事を通して社会に新しい価値をつくっていきたいと考えています。
価値そのものだけでなく、「新しい価値観の軸」を提示していくこと。
それと同時に、一緒に働く方たちにとっても“ここでの時間が人生の意味になる”――そんな場でありたいと思っています。

Inquiryは、人や組織、地域社会がよりよく変化していくための“仕組み”や“企画”をつくり、それを現場で実現し、伴走していく会社です。
社会や仕事のあり方はこれからどんどん変化していくと思います。
だからこそ、私たちは「これまでの常識や当たり前を疑うこと」を大切にしています。
それは組織のあり方だけではなく、一人ひとりの生き方や働き方にも共通して言えることです。

仕事とは何か――。
お金を稼ぐため、という側面はもちろんあります。
でも私が十数年の社会人生活の中で行きついた答えは、「仕事は、自分が生きたい人生を表現する手段である」 ということです。

人生を振り返ったとき、
「私の人生はこうだった」と語る瞬間。
その大部分に、仕事というフィールドが深く関わっています。
誰もが職業を通して、自分の人生に意味づけをしている。
職業選択とは、生き方の“表現方法”を選ぶことなんだと思うんです。

だからこそ、Inquiryで働くことがただ生活のための手段になるのではなく、
その人の人生にとって得難い意味を持つ時間になってほしいと願っています。

ともに学び、成長しながら、
新しい価値をつくっていくことを“面白がれる人”。
自分自身の人生に、もっと意味を付与していきたいと願う人。
そんな方と一緒に仕事をしたいですね。

そして、私自身、その人に深く感じるものがあり、「この人、面白いな」と思ったら、どんな形でも働く機会をつくりたいと思っています。
週1日・3時間でも構いません。

「Inquiryで働いてみたい」
そう思ってくれる人がいたら、どうか気軽に飛び込んできてほしいですね。
事業内容 ラーニングデザイナー

取材者情報

今回の社長へのインタビュアーのご紹介です。
「話を聞きたい!」からお問い合わせを頂いた場合は運営会社の株式会社採用戦略研究所を通して、各インタビュアー者よりご連絡させて頂きます。

取材者名 ㈱採用戦略研究所 土田
住所 新潟県長岡市山田3丁目2-7
電話番号 070‐6433‐5645
事務所HP https://rs-lab.jp

話を聞きたい!